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今月の住宅

No. 9 富樫克彦さん設計の家

設計  富樫克彦

この家はわたしの友人の家です。家族は夫婦に中学生の男の子。とても仲のいい家族です。夫婦とも学者、そのため本の収納には多くのスペースがとられています。その量は尋常一様ではありません。

設計の問題点、施工の問題点はこの家の所在が路地奥だったことでしょうか。でも、その路地の奥の場所性が見事に生かされています。土地 35坪 延べ床50坪。予想より大きな家になっています。空間の工夫、新鮮な創造性には限界はないのだなあと感じました。

←写真1

路地を入ってきてたところです。波板の扱いが美しい。この家の面白さの一つに設計の富樫さんの素材の選択、扱い、デザイン処理のうまさがあると思います。

写真2→

一階内部です。足下にとられた窓の内側には障子が入る予定とか。訪れる人の気配をここで感じることができます。右手に玄関があります。この場所は奥様の書斎として使われます。

←写真3

左手を見ると、主寝室があります。この家の低旋律のように、デザインアクセントして繰り返される大小の穴が扉のような壁のような引き戸に開けられています。光、気配を感じる仕掛けでしょうか。

←写真4

ステップをあがるとバスルーム。引き戸がついています。

コンクリートが欠けている床は、じつは地下への扉です。階段を下りると本棚が並んで常時乾燥機が稼働するようになっています。

写真5→

バスルームはすばらしい。右手にトイレが置かれています。裸のスペースだけは贅沢をしてして欲しい物ですね。

←写真6

2階です。リビング・ダイニング・キッチンがあります。路地奥からの視線を考えた窓の処理になっていることがお分かりでしょう。

2階への階段の処理に先ほどの穴のパターンが繰り返されています。上階からの光を感じる仕掛けでもあります。

↑写真7
ベンチがそここにしつらえられています。
←写真8

階段を上がってきて台所を見たところ。お客さまを招いた時、台所を見せたくないときこの引き戸をひきだします。左手に押し込むと窓のように開けられたところが、収納への窓にもなる仕掛けです。

写真9→

台所の前をめぐってリビング・スペースへ。左に洗面、トイレ、階段。ここを中心にこの部屋はぐるりと回ることができます。この回遊性は好きです。

↑写真10                  →写真11

3階。階段を上がってきたところに左右に2室。ご主人の書斎と息子さんの部屋。開け放つと空間の閉そく感が消えます。光と風は都市の中に埋め込まれたこの家の状況をわすれさせます。

細かなデザインの配慮と建築としての空間の造形がここにはうまく調和しています。

 

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