今月の住宅

No. 14 コーポラティブのなかの驚きの発明

設計 阿久津友嗣さん

 驚きがこのコーポラティブの空間にはあります。建築家にイマジネーションさえあれば、どんな空間も創造できるという、これは証だといってもいいでしょう。なお、ここは基本的に柱と床が与えられ、あとは各人が自分で内装、住居部分をつくる形だと言うことです。多くの方はこのコーポラティブを企画、設計された事務所に内部設計は依頼された方が多いと言うことでした。
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奈良にあるコーポラティブです。阿久津さんは途中からの参加。かれが選んだ場所は他の人が選びたがらなかった場所、法的にはいうなれば地下。とはいえ傾斜地なので一階のように見えます。

模型写真 →

これは模型。分かりにくいので図面を参照してください。模型の右手は土に接しています。右手に細い通路が一本走っているのは いわば空堀。土からの湿気を防ぐ仕掛けであり、通路でもあります。いつも外の空気が流れるようになっています。

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玄関というより門でしょうか。長いアプローチが取られていて、まるで一戸建ての気分です。

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玄関です。扉を開けた状態です。向こう突き当たりに空へ抜ける光の井戸が見えます。これが空気をいつも流通させる仕掛けのポイントでもあります。

← 写真5

じつは前の写真の玄関の左手にこの内玄関風な場があります。ここは内庭、坪庭といってもいいでしょう。お友達はここから、ビジネスのお客さんは前の写真の玄関を通るのでしょう。

←写真6

正式の玄関を入って奥まで行って左に曲がるとこの打ち合わせ場所に出ます。

写真7

打ち合わせ場所の見返しです。ちらと右手にドアが開いていますが、これは普段は閉じられています。扉の奥はプライベート空間です。

打ち合わせ場所の先はオフィス空間。左に曲がったところを見ています。木の扉の裏は収納、台所、プライベート空間への通路など。でもよその人にはどこがどうなっているか 分からないしかけです。じつはプライベート空間はこの家具を壁として囲われています。この仕掛けがじつに効果的です。

事務所の見通しです。右手は外。金属パネルは目隠しですがとてもオープンです。

↑写真8

オフィスを通り抜けるとセミパブリックなリビング、ダイニングがあり最初の玄関脇の坪庭のところに立ちます。ここには板の間。奥には一段上がって畳の間へとつながります。

写真9、10↑→

畳の間からダイニング方向を見たところ

↑ 写真11
写真12↑

玄関脇のフロストグラスの扉をあけると プライベート空間が見えます。まず、お風呂が見えます。位置関係はお分かりでしょうか。

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あらためてバスルーム。木の風呂はいいですね。奥にトイレ。

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バスルームの脇、家具の間に廊下のように見えるプライベート・ゾーン。くつろぐ椅子やテーブルもあり、その奥にはベッドもあります。このベッド、レールの上に乗っていて、収納扉を開けるとき、邪魔になれば動くようになっています。

写真15 →

← 写真16

坪庭方向を見返したところです。ぐるぐる回れて、途中で空間をスキップすることもできるなんともすばらしい空間です。

写真17 ↓

 平面図を見ていただくと、その明快さにただただ驚くばかりです。美しい図面は設計としてもすばらしいがぼくの信念です。これはまさにその実証と言ってもいいでしょう。暮らしにも全く無理がない。それに飽きの来ない空間。驚きがうれしいです。

中原洋

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